ヘルペスウイルスの代表的な感染症としては、帯状疱疹と単純疱疹などがあり、単純疱疹には口唇ヘルペスと性器ヘルペスがあります。
口唇ヘルペスは、発症の前兆として口唇周辺にピリピリ感やムズムズ感などの違和感が現れ、数時間~数日で口唇周辺に直径5mm程度の発赤や水疱が発症しますが、顎下のリンパ腺が大きく腫れて痛みを伴う事もあります。
水疱は、自然に潰れると共にかさぶたを形成し、2週間程度で自然治癒します。
口唇ヘルペスは、感染患者とのキスで感染しますが、病原の単純ヘルペスウイルス1型を保有する祖父母や両親の頬ずりも感染経路の1つとされ、高齢者ほど単純ヘルペスウイルス1型の保有率が高い特徴があります。

性器ヘルペスは、初感染時には2日間~10日間程度の潜伏期間を経て発症します。
外部生殖器を中心に臀部周辺や太ももに発赤や水疱、潰瘍などが形成されると共に38度を超える発熱症状や鼠径リンパ節の腫長症状、全身の倦怠感などの症状が現れます。
再発を繰り返すほど発赤や水疱の発症範囲の局所化など再発時の症状が軽症化します。

性器ヘルペスは、性行為により単純ヘルペス2型に感染する感染経路が一般的です。
近年のオーラルセックスの普及により口唇ヘルペスを発症させる単純ヘルペスウイルス1型が外部生殖器に感染する感染経路が問題視されています。
帯状疱疹は、患者の咳やくしゃみなどのしぶきに含まれる水疱瘡を発症させる水痘・帯状疱疹ウイルスを吸い込む飛沫感染や接触感染などの感染経路による感染がほとんどです。
2週間~3週間程度の潜伏期間を経て直径3~5mm程度の丘疹や38℃前後の発熱などの症状が現れます。

ヘルペスは、1年間に6回以上再発している性器ヘルペス感染患者に対して保険適用で再発抑制治療が行われるほど再発率が高い感染症です。
1度感染すると一生涯ヘルペスウイルスを保有し続ける事になる事から医薬効果や免疫力が低下するとウイルスが再活性化して再発を繰り返します。
ヘルペスウイルスは、感染患者の細胞核にウイルスのDNAを内包しているカプシドを送り込む事で感染患者の細胞基質を材料として増殖可能としています。
増殖の最終プロセスで感染細胞の細胞膜をウイルスを覆う外膜エンベロープとしてまとってしまいます。
そのため感染患者の細胞と親和性が非常に高く医薬効果や免疫力の高い生態環境時には神経節の神経細胞内で潜伏感染します。
帯状疱疹治療や単純疱疹治療に用いられているゾビラックスなどの抗生物質でも完全に死滅させる事ができず1度感染すると一生涯ヘルペスウイルスを保有する事になり再発を繰り返します。

ヘルペスの治療薬の紹介

ヘルペスの治療薬は、多くの医療機関でDNAポリメラーゼ阻害薬が用いられます。
DNAポリメラーゼ阻害薬にはアシクロビルを主成分とするゾビラックスやアシクロビルの分子骨格に必須アミノ酸のバリンを結合させたプロドラッグのバラシクロビルを主成分とするバルトレックスがあります。
また、バルトレックスのジェネリック医薬品セントレックスなどがあります。

アシクロビルは、ヘルペス由来の酵素チミジンキナーゼと感染患者の細胞性キナーゼによりアシクロビル3リン酸にリン酸化されます。
構造が酷似しているヘルペスウイルスの拡散構成基質のデオキシグアノシン3リン酸の代わりにDNAの塩基配列に取り込まれることにより、DNAポリメラーゼの働きを阻害します。
間違った塩基配列を形成する事でヘルペスウイルスの伸長を阻害すると共にヘルペスウイルスの増殖を抑制する医薬効果を発揮します。

バルトレックスやジェネリック医薬品のセントレックスは、必須アミノ酸のバリンを結合したバラシクロビルを主成分としています。
そのため小腸からの体内吸収率と医薬成分の体内への拡散率を示すバイオアベイラビリティをアシクロビルの10%~20%を約55%まで向上させ、少量の用量でも充分な医薬効果が得られます。
従来の治療薬の服用回数の半分以下の1日1回~2回の服用で治療を行う事が可能です。
バルトレックスやゾビラックスは、発疹や腹痛、下痢などの比較的軽い副作用が稀に発症する安全性の高い治療薬です。
体調や体質によってはアナフィラキシー・ショックや急性腎不全、皮膚粘膜眼症候群などの重篤な副作用をごく稀に発症する事があります。
服用中に脱水症状になるとアシクロビルの特性上医薬成分濃度が溶解度を超え、再結晶化してしまい腎臓内の尿細管が閉塞する急性腎尿細管間質障害を発症する事があります。